ただ、人に何かを言われるということが気に入らない
そういう人間がいることが分からなかった。
身長175センチ、22歳、処女。
女子大生の手持ちぶさたな日々の裏側に潜む「暴力」と「哀しみ」を描いた
芥川賞作家のデビュー作!
れんげ
この記事を書いている私は、年間読書量250冊以上・小説好きのインドア女子です。このブログでは、私が本を読んで感じたことや心からおすすめしたい物語をご紹介しています。本選びの参考にして頂けたら嬉しいです
今回読んだのは、津村記久子さんの『君は永遠にそつらより若い』です。
・大学生たちの怠惰な日常、繊細で壊れやすい人間関係
・ぐいぐい読ませる文学的かつクセのある文体。
・懐かしい、ノスタルジーな気分に浸りたい
あらすじ
大学卒業を間近に控え、就職も決まり、毎日バイトと学校と下宿を行き来しながら、友人とぐだぐだした日常をすごす主人公のホリガイ。
自分には決定的な何かが足りない。
欠落感と劣等感を抱きながら、何とか周りに愛想を振り撒いている自分に辟易していた。
そんな時、同じ大学に通うイソガイに出会う。
ネタバレなし・感想
相手が欲しい言葉が分からなくて、
居心地がいいと思っていた人が離れていってしまう。
ああ、またか。
自分はこういう時、みんなみたいに動けない、
どういう言葉をかければいいのか分からない。
考えて考えて、それでも結局相手を怒らせてしまうような余計な一言を付け足してしまう。
私の人生は失敗だらけ…
物語に登場する主人公のホリガイは、不良でもないし、派手さもない。
寧ろ真面目でそこそこ優秀な、地味な方の女子大生。
だからかな、
彼女の考えてること、思っていることに一つ残らず共感できてしまう。
自分の嫌な部分を見ているようで苦しくなった。
ある日、大学の授業の隣の席に座っていたイソギさんと出会う。
彼女たちの出会う瞬間から関係が深まっていく時間が簡単には手に入らない、
すごく尊いものに思えてきます。
優しい言葉もなく、相手のこともよく知らなくていい、
なのに、2人が抱える苦しみが少しずつほぐされていく曖昧で確かな心地よさ
「ただ理由もなく君を想っている」
「それだけで充分だ」
理由もなく何かに固執するホリガイと
心と体に深い傷を負ったイソギさん
何にも縛られていない、縛りたくない、
でも会いたい、何となく..くっついていたい
ひとりでも誰かに想われてるってだけで、
何かが報われる気がしてくる、
言葉でも行動でも証明できない、
2人の間にしか通じない安心感。
誰しも理解し難い不思議な原動力で生きていたりする。
これぞ日本文学って感じの言葉の並びと1文の長さに面食らいます。
この微妙で曖昧なニュアンスを感じ取れることが、日本文学の最高の贅沢ですね。
登場人物たちの会話や曖昧な人間関係、
大学生が心の内に抱えている悩みや己との葛藤がヒリヒリ伝わってくる一冊…
ぜひ一度堪能してみてください。
れんげ