【感想】無宗教者だからこそ理解したい神秘と信仰の景色「ピスタチオ」梨木香歩

美しい自然と信仰の心を描いたおすすめ小説

患者をどこまでも客観視しようとする日本と
患者の心にどこまでも寄り添おうとするアフリカ

無宗教者だからこそ理解してみたい、知っていた方がいい、
水、木、風、人の魂、自然のあらゆる神秘を信仰する人々との価値観、考え方。

視野を一気に広げてくれる教養性、
自然の魅力と壮大さに癒され圧倒される、美しい読書体験を。

れんげ

こんにちは、れんげです
この記事を書いている私は、年間読書量250冊以上・小説好きのインドア女子です。このブログでは、私が本を読んで感じたことや心からおすすめしたい物語をご紹介しています。本選びの参考にして頂けたら嬉しいです

今回読んだのは、梨木香歩さんの『ピスタチオ』です。
この記事には、本を読んだ率直な感想と考えさせられたこと(学べたこと)を書いています。※ネタバレは含みません

こんな人におすすめ
・今の日常に不安や焦りを抱いている
・自然や生きていることの尊さを物語で感じたい
・日本と海外との価値観の差に迫る本が読みたい
・宗教を信仰する人々の考え方に触れたい

読みやすさ
(3.5)

没入感
(4.0)

場面切り替え・展開
(5.0)

全体の評価l
(4.0)

あらすじ

緑溢れる武蔵野にパートナーと老いた犬と暮らす、ライターの棚(たな)。
愛犬の病、カモの渡り、前線の通過、友人の死の知らせ…何の前触れもなく、不吉な予感を感じさせる出来事が彼女の周りで起こり始めます。
そんな時舞い込んできたアフリカ取材の依頼。

何者かに引き寄せられるように、アフリカの地を踏むことになった棚を待っていたのは、妖しい儀式をする村人たちや双子の妹を探している少女。

水、森…自然の様々な神様が崇められるアフリカで無信仰者の棚が体験したこと、出会った人々を通して見えてきたものがノンフィクションのように記されている、
神秘に満ちたアフリカ旅行記。

れんげの感想

何かを信仰している人たちが、なぜ形も見返りもないものを強く崇め信じ続けているのか。

無宗教者が多い日本では、敬遠されがちなテーマ「信仰心」を梨木香歩さんが
とても分かりやすく、そして魅力的に落としてくれていました。

論理的に理解していないのに、抵抗もなくストンと落ちてくるこの感じ。

「死者には物語が必要」

見栄や威厳のためではなく、
死者にはそれを抱いて眠るため、私たちには安心して眠りにつくためには
真実でなくて、物語が必要なのです。

アフリカと日本の”圧倒的な文化の違い”に翻弄されながらも
どんなに辛い事実がこの先待っていたとしても安心したい、安心っていいよねって

この感情は文化や信仰を超えて共有できるものなんだなって思います。
呪術・アフリカに対する怖くて怪しいイメージ。

本当にそういう力があるのかは分からないし信じられない。
でも人が見えない力に支えられて生きているという事実も否定できない。

その可能性、新しい見方を吸収できるのが本作の魅力でした。

日本は無宗教の人であふれていて、宗教に所属している人が少数派。
街中でも”強い勧誘”や”詐欺”など嫌なイメージを植え付けられてしまう環境で、

“何かを強く信仰する”という行為がどういうことなのか、正しく理解されないままなんですよね。

なぜ人は熱心に神様を信仰しようとするのでしょう。

長生きできるわけでもない、
魔法が使えるようになるわけでもない、
未来が変わるわけでもない、

だったら何のために?

何も信じていない主人公から語られる、”信仰心”。

こうやって”こういう人もいるんだな”という新しい理解が自分の内面の成長に繋がっていくんだと思った。

加えて、最後まで読まなければ分からないタイトルの意味に”あっ..”という衝撃。

読んだ後に得られる”読んでよかった”感覚がとても独特で、
まだ自分がアフリカという地を彷徨っているような不思議な気持ちで包まれます。

何かを信仰するという文化、彼らがみている景色に少しだけ近づけたような
すっきりした気持ちで満たされる物語です。

壮大な力をもつ自然を前にして感じるちっぽけな自分。なんでこんなことに悩んでいたんだろう、時間を使っていたんだろう。
もっと新しい知識を、考え方を吸収したい!

そんな意欲を掻き立ててくれる作品の中で
少しだけ成長できた自分と出会えました😊

興味がある方は一度挑戦してみてください^^

れんげ

 

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