【感想】恩田陸「きのうの世界」を読みました。

こんにちは、れんげです。
今日は恩田陸さんの「きのうの世界」という物語をご紹介します。
上下2巻で完結している、謎に満ちたミステリー小説です。
これまでにも恩田陸さんの本を何冊か紹介してきましたが、この作品は「常野物語シリーズ」を匂わせている気がします。
ぜひ、みなさんの参考になれたら嬉しいです!

きのうの世界(上) (講談社文庫) 恩田陸
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きのうの世界(下) (講談社文庫) 恩田陸
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ストーリー

上司の送別会から姿を消した男・市川吾郎。

謎の失踪から一年後、ある寒い朝に彼は離れた町の「水無月橋」で死体となって発見される。

そこは、3つの塔と「水路」がある小さな町。

なぜ彼はその町にいたのか。

さまざまな手がかりと”その町”に秘められた謎とともに明らかになっていく彼の死の背景…

果たして彼の死は何を意味しているのか。

恩田陸渾身の謎解きミステリー

あなたは見破れるか。

こんな方におススメ!

・推理するのが好き
・たっぷり時間をかけて長編物語が読みたい
・恩田陸作品が好き(常野シリーズ)

読みやすさ (難易度)

ストーリー
(4.5)

構成
(4.0)

登場人物
(4.5)

Total
(4.5)

難易度高めです。
ただ、ミステリー好きさんには堪らないストーリー構成です。

上下巻共に細かく(一冊につき約20章近く)分かれていて、頻繁に語り手が入れ替わりながらストーリーが展開していきます。

事件解決につながりそうな手がかりや人物の行動を多方面からインプットできて、まさに読者側が推理を委ねられているような気分に。

上下巻と結構な長編小説になるので、時間はかかると思います。

ですが、恩田陸さん独特の章編成に気づいたら夢中でページをめくっていました。

見どころ

上巻で主人公かと思っていた語り手たちが下巻には登場しなくなるところは、さすがに度肝を抜かれました。

予測不可能でした。

恩田陸さんの作品は、一定のリズムが無く自由な展開に驚かされ、そして大いに楽しませてくれます。

「常野物語」を読んでいる方は気づくと思いますが、主人公・市川吾郎という登場人物は常野物語にでてくる「しまう人」を連想させます。

何か関係性があるのかな。

感想

ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。

誤字脱字や稚拙な表現が目立っていると思いますが、よかったらどうぞ優しい目で読んでいただけると嬉しいです。

ネタバレを含んでいますので、先に読了をおすすめします。

未解決の多くの謎

この物語は謎が多く、読者を不思議な感覚にさせる。

直接的には説明されていない部分もあったりして本を読み終わった後にもずっと考えてしまうストーリー内容は、恩田陸さんの目論みなのだろうか。

丘の石を「墓」といった吾郎は何を知っていたのか。

大おばが和音にさせていたこと(塔にのぼりハサミを引き出しにいれる作業)は何を指していたのか。

子供たちが塔に結びに行った赤いリボンの本当の意味とは何なのか。

「鬼」はこの町となにか関係しているのか。

最後の二章で語られる市川吾郎が死ぬまでに起きていた不思議な現象は一体なんだったのか。

これも彼の能力の代償なのだろうか。

大雨のなか慶吾が出会った「あいつ」とは…

「あなた」

上巻であんなにでてきた謎の人「あなた」。
まさに読者自身が謎解きをしているような感覚になりワクワクした。

終盤で東京からやってきた女性だと判明したところで、下巻ではあっけなく死んでしまう。

なんなんだこの展開

彼女のこれまでの人生や修平と和音に語った幼い頃の思い出、彼女がこの町を訪れた理由を語っていた。

謎に包まれたまま死んでいき、挙句の果てに大叔母と和音に放火犯人として見立てられてしまう。

彼女が大叔母に会いに行ったとき、一体どんな話を聞いたのだろう。

彼女の帰りみちの次のシーンではすでにホテルで亡くなっているのを発見される。その空白の時間になにがあったのか。

たくさんの疑問が湧き上がってくる。

一文一文が何か重要な意味を指しているようで、注意深く読み進めている自分がなんだか面白く思えてくる。

そこが彼女の作品の魅力なのかもしれない。

とりあえず彼女の他作品を手に取り、何か手がかりになるものを見つけようとしよう。

最後に

謎に包まれたままのこの作品。

ちゃんと明らかになる部分もあります。

スピンオフとか他の形で今後読む機会があるとファンとしては嬉しいです。

本日は、この辺で失礼します。

れんげ

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