【感想】宮部みゆき「誰か」を読みました。超お人好しサラリーマンの名推理!

本日は、宮部みゆきさんの「誰か-somebody-」についてご紹介させていただきます。

私は昔から殺人事件がとても苦手な性格で、推理物はあまり好んで読まないのですがなぜかこの物語は気に入ってしまいました。多分、主人公の杉村さんの愛嬌のあるキャラクターに魅力を感じてしまったのでしょう。

すぐに第二作目を購入しました。
共感してくれる方いらっしゃいます?

誰か―Somebody (文春文庫) 宮部みゆき
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ストーリー

結婚条件として義父の命令で今多コンツェルンの広報室に勤めることになった主人公、杉村三郎。

事故死した同社の運転手、梶田信生の娘姉妹から亡き父のことを本にして書き留めておきたいと依頼を受け、彼の人生を辿り始める。複雑な人間関係の中に存在する信頼と裏切り。果たして、杉村は見破れるか。

お人好しで好奇心旺盛の一般会社員、杉村による少し不器用な推理物語。杉村シリーズ作品第一弾!

こんな方におススメ!

・事件物だけど温かい平和な終わり方が好き
・冴えない男の推理に興味がある
・じっくり深く物語を読みたい
・シリーズ物が好き
・消化度抜群がいい

読みやすさ

ストーリー
(4.0)
構成
(3.5)
登場人物
(4.0)
Total
(3.5)

長編小説でとてもボリュームがあります。特に章分けされていませんので、ずっと物語が続いていく感じです。私の場合は、内容に夢中になってしまい一気に読んでしまったため構成に関しては特に気になりませんでしたが、、

全体的に主人公視線で捉えられていて統一感があります。一緒に事件を推理しているような探検心を抱きながら楽しめると思います。結末も凝っていますが、主人公の未完成な探偵ぶりに目が離せません。

主人公がとても一般的な会社員というだけあり、価値観や反応、物事の捉え方に共感できる部分がたくさんありますし、わかりやすいです。

見どころ

私は、個人的に登場人物それぞれの人間性に注目していただきたいです。設定にとても凝っていて、読んでいてついつい感情移入してしまいます。

また、大企業の一人娘を妻にもつ杉村三郎は”逆玉の輿”という皆が羨む環境の中で向き合わざるを得ない現実の厳しさが割とリアルです。彼の人の良さだからこそ乗り越えられているのかなと感心してしまうほど。今後このシリーズを読んでいく上でとても重要になっていきますのでじっくり読んでいただきたいです。

感想-お気に入り-

ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。興味のある方は覗いていってくれると嬉しいです。よろしければあなたの意見を聞かせてください。意見交換等していけると嬉しいです。

ネタバレを含んでいます。もし、読了していない方はどうぞ先に読んでみてください^^もし、気が向いたらこちらに戻ってきて頂けると幸いです。

杉村三郎について

冒頭に、彼は好奇心旺盛の一般サラリーマンであると述べたが、読み進めていくと見えてくる杉村三郎の素顔はそんなんじゃない。

困っている人を助けたいというお人よし心だけで動いているのではないだろうか。お金には困っていないのに一体何が原動力となっているのだろう。

話の中で彼が自分の状況だったらとか、親の立場だったらどうしてるだろうと考えることが多く、論理的というより人の感情を推理している様子がわかる。

そして、捜査に強引さが全くない。彼の優しさ、マイペースさがイライラを呼ぶこともあるかもしれないが、(多分、そこが気に入らないという読者もいるだろう)相手の気持ちを最優先にして行動し人と接しているところが私はすごく気に入っている。

何より、誰に対しても落ち着いて、公平に付き合っている(表向きでは)。たとえ、被害者や加害者、彼に嫌な態度をする人に対しても。

偏見を持たず、人の意見に流されず、1から人との関係を築いていこうとする彼の姿勢は、私が憧れる、大人になっていく上での一つの目標である。

そういう彼の性格は、人に懐かれやすく自然に周りに人が集まってくる気がする。特に優れた能力や頭脳を持っているわけではないのに、一度会った人は彼をまた訪れたり連絡をしたりと彼を頼り助けようとしてくれる。

見えない魅力には絶大な威力がある。私も虜になってしまった。

いつも後ろを振り返り、何かが追いかけて来はしないかと怯えているのだ。

それは何故だろう。

杉村三郎が聡子の話を聞いている時にふと自分自身と重ね合わせてしまう。僕の菜穂子との今の幸せが怖い。僕も聡子のように小心者だ、と。

人の気持ちを最優先にし周りが見えなくなるくらい一生懸命になる杉村だけど、自分のことになると常に何かに怯えていて用心深くなる。すごい権力を持った人々に囲まれて自分の存在に価値を見いだせずにいるのではないか。

逆玉の輿という事実が職場やら彼のプライベート生活やら、並大抵の図太さがないとやっていけない環境だと思う。社長との関係上、会社でも一人孤立して誰も近づいてきてくれない悲しい現実に彼は、何を思っているのだろう。

今多コンツェルンに移って以来、同僚に一杯も誘われなくなった寂しさを語っている杉村がとても小さく見えた。彼なりに必死に頑張っているんだな。

寂しいと思う時もある。自分で意識している以上に、私は孤独なのかもしれない。

目に見えない重圧。

上下関係のある部活動、権力競争がある学校の教室、コテコテの日本企業を経験したことのある私は、この重圧がどんなに重苦しいもので、目の前にすると無力になってしまう自分を想像できた。

これを弱々しいと捉える世間は大半であろう。世間は冷たいところだ。

彼の場合、どこか自分自身を押し殺して生きている。

彼の気持ちの拠り所はどこなのだろう。

趣味も捨て、キャリアも捨て、今の状況を選んだ彼をあなたはどう思いますか?

逆玉の輿というのは、玉の輿よりイメージは悪い気がするがこの物語を読んで、実際は精神的に非常に辛い立ち位置だと感じた。

私が男だったら、絶対選ばない。そりゃお金があって良い暮らしはできるかもしれない。しかし、相当な心構えと忍耐力と強さが必要だ。

リスクを選んでまで妻の菜穂子と一緒にいたい、彼女と桃子を守りたいと思う杉村は充分男らしいと思う。そういった重圧やプレッシャーを上手くかわしながらも家族を大事に思っている彼の姿は男らしいしかっこいい。

彼の推理

彼は推理の初心者である。そこも魅力の一つ。

彼の閃きや思考回路は全て文章中からよみとれるのだが、推理に行き詰まっている杉村や、事情聴取中になんとか興奮する自分を落ち着かせないと、と自分に言い聞かせている彼の様子を見ていると普通の人間らしさが感じれてなぜかホッとする。

ああ、彼も冷静に見えて頭の中ではこんなこと考えているのか。

人とのコミュニケーションは難しい。

人間関係って難しい。

彼を見てると、相手を観察し、慎重に考えながら言葉を発しているんだなと感じた。

そしてそれを毎日コツコツ実践し、習慣にしていくことが慣れに繋がり、コミュニケーション力を高めるんだなと思う。

”事件”物は、必ず悪者が存在する。

この作品を読んでいると、悪者が悪者に見えなくなってくる。

つい犯人に同情の気持ちが湧き上がってしまいそうになる展開である。

それぞれの人物がそれぞれの物語を持っていて、その中で懸命に生きている。

様々な人間の種類を見せてくれる。そしてそれを杉村は否定せず受け止めていく。

宮部みゆきさん、もしくはこの主人公、杉村三郎が捉える犯人は決して100%悪者だ!と決めつけはせず、それでいて被害者の悲しみ、杉村のやるせなさ、憤りを上手く混ぜ込みながら物語を進めていくところがとても魅力的なミステリーだなと感じた。

最後に

私は理不尽で無差別に人が殺されてしまう話が怖くて読めません。

映像を持たない文章でさえ夢に出てきたり、悲しい気持ちからなかなか解放されない。

多分、なぜならその人の行為の原因や根底が理解できないし、被害者は防ぎようがないからだと思います。

この小説に関しても、人が死んでしまうところ、過去に誰かを殺害してしまい隠蔽してしまうなど不快になりました。ただそれ以上に、愛情も人情も描かれているため体温を取り戻していく感じがします。

ミステリーが好きな方には物足りないと思う方もいるかもしれませんが、私はオススメします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

れんげ

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