れんげ
私は、年間250冊以上小説を読んでいるインドア女子です。このブログでは私のおすすめ小説、本を読んで感じたことをそのまま感想文にした記事も書いています。
小説に興味がある方、読んでみたいけど何を手に取ったらいいか分からない方の本選びの参考にして頂けたら嬉しいです!
今回読んだのは、篠田節子さんの『弥勒』です。
⚪︎宗教・文化人類に興味関心がある
⚪︎没入感たっぷりの長編小説が読みたい
「弥勒」 著者:篠田節子/ あらすじ・感想
独自の仏教美術に彩られた美しい王国、ヒマラヤの小国・パスキム。
新聞社社員の永岡は、展示会開催に向けて国の情勢を探るため、政変で国交を断絶したばかりの国・パスキムに単独潜入する。
パスキムで永岡が目にしたものは、
僧侶たちの無惨な死体が山積みにされ、美術品がすべて消えた後の
変わり果てた街だった。
一刻も早く逃げようと引き返すも…彼も革命軍に捕えられてしまう。
<感想>
深い海の中に溺れるように
奥底へとはまっていく没入感
苦しい、重い、
身も心も震え始めるほどの恐怖を味わいながらも
心からこの物語を読んでよかったと
確信している。
大声で叫び出したくなるような
この恐ろしく充実した読書体験は
感情に大打撃を与え
体力が読書によって消耗していく感覚を味わいました。
本を持つ手に力が入り
肩にも力が入り、
気づいたら眉間に皺が寄っていて…
殺らなければ自分が殺られる
そんな緊迫感で張り詰めたようなスリルが続く660ページ。
著者・篠田節子さんの取材力、想像力、
そして読者の思考を次々と膨らませていく筆力の力強さに
ただ圧倒された。
入国してしまった後悔をする間もなく
たくさんの死体を目にし
黒ずくめの男たちに山の奥へと強制連行された
新聞社会社員の主人公。
仏教の国、パスキムで大量虐殺を命令した新たな支配者ゲルツェンが用意した村での暮らしが始まる
美しい信仰文化と仏教美術を誇る国から
聖職者がみな殺しされ、
国を象徴する美術品のすべてが破壊された国へ
一体何のために?
「私はただ、権力を必要としない
カースト底辺の人々が救われるような無政府社会を作りたい」
ゲルツェンが望む「理想郷」案を耳にしてなお、
永岡にとっての地獄のようなキャンプ暮らしを
幸福だと喜ぶ村人を前にしてなお…
悪いのは全部お前だ、
すべて間違っていると言いきれるか。
物語では、日本人が外国人として扱われる感覚をリアルに想像させ
様々な民族たちと出会うことで新たな視点に気付かされる。衝撃の連続でした。
ーーー本当の意味での平等とは、幸福な世界とは何か。
読者は、
「宗教改革=人を信仰から切り離す」ことの本当の恐ろしさを
この物語で知ることになります。
強制結婚、
兵士として完璧に教育(洗脳)されていく子供たち、
医療や経済成長を一切否定した人々の暮らし、
人間が人間でなくなっていく、
心を失っていく過程があまりにも残酷でした。
皆が豊かに安心して暮らせる世界をつくることは
こんなにも無謀なことなのか、、、
最後の最後の一文まで
著者の篠田さんは決して力を抜こうとしない。
主人公の視線の先にあるものを、読み手も一緒に見つめているような….
ひどく冷静でいられたラストに
興奮は高まるばかりでした。
ーー見たくないものは誰かに押し付けて 見ないで済ますのが
世の中で言われる「美意識」や「文化」なのかもしれない。
インド文化やヒンドゥー教を「美の象徴」と讃える人間に
容赦無く平手打ちを喰らわせる
自分の中で凝り固まっていた先入観や固定観念を揺さぶり
革命をもたらしてくれた一冊でした。
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