【感想】宮部みゆき「ペテロの葬列・下」を読みました。怒涛のラスト!

本日は、宮部みゆきさんの「ペテロの葬列-下-」を紹介します。
上巻に引き続き、下巻の登場です。

ご察しの通り、全てが解決します。上巻をまだ読んでいないという方は、先にこちらをどうぞ^^

【感想】宮部みゆき「ペテロの葬列・上」読了。拳銃を持ち微笑む老人の謎
バスジャック事件の犯人が何者だったのかという内容だけではなく、杉村三郎自身の人生にも大きな変化があります。上巻よりさらに、展開が激しい下巻は読みごたえ抜群です!

ストーリー

バスジャック事件に巻き込まれた杉村三郎含め被害者全員に届いた「慰謝料」をめぐり正義と人間の欲がぶつかり合う。

あの老人は一体何が目的だったのか?お金は、どこから届いたのか?深まる謎、犯人の正体。

かつて膨大な被害者を出したとされる事件が絡み合う衝撃の結末とは。

全ての謎が解けた時、私たちは何を思って願うのか。

杉村三郎シリーズ第三作目、遂に完結。

読みやすさ

ストーリー
(4.0)

構成
(3.5)

登場人物
(4.0)

Total
(1.0)

上巻を読んでいないと読み進めるのはなかなか難しいです。まずは上巻を。

ストーリー展開が上巻と比べかなり著しく、ページをめくる手がとまりません。

章分けはされていないのですが、スラスラ読めしまう推理小説です。

会話も多く先に進みやすいですが、登場人物が多いのと内容も奥深いので週末やお休みの日など、

じっくり時間を使って読んでいただきたいです。

見どころ

これまで、ゆっくりじっくり進んできたことが下巻では、一斉に展開し、真実が明らかになっていきます。

それぞれの事件に共通点を見出すことができるので良くまとまっているなと感じました。

個人的には、タイトル「ペテロの葬列」の由来ともなるシーンがでてきたことに感激というか興奮を覚えました。

感想

ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。

興味のある方は覗いていってくれると嬉しいです。

ネタバレを含んでいますので、先に読了をおすすめします。

もし、気が向いたらこちらに戻ってきて頂けると幸いです。

洗脳という殺人

入口では被害者、出口では加害者、悪いのは一緒。

ーーー知らないうちに自分は加害者になっていたーーー

洗脳というのはとても恐ろしい。この小説を読んでいると悪徳商法が単なる犯罪には見えなくなっていった。

人を洗脳し、騙していくだけではなく洗脳する人を育て上げていく。

その人の人格をも変えてしまおうとする。大げさに言うと殺人とも言えるのではないか。

個を殺しているのと同じだ。

あの老人や坂本君の人格を変えてしまったように。

気づいたときにはもう手遅れなのだ。あなたも加害者の仲間入り。もう逃げられない。

惨すぎる。

老人が指示した”慰謝料”を被害者にすべて送り届けたお婆さんが言っていたように、罪悪感と後悔からは逃げられない。

あの老人のように罪を償おうとする。耐え切れず自殺してしまう人もいれば、寄付したり人にあげようとする。

坂本君は自分の中にある正義感と必死に戦ってきたのだ。

人を騙してもぎ取ったお金を自分がもらったら共犯になる。そして、彼が関わり始めたビジネスも実は同じ類の内容だったと気づいたときの彼の心情を思うととても悲しい。

きれいな心がまた一つ汚されようとしていたのだ。

私は、身の回りにいる家族や大切な人たちを守りたい。

聖ペテロの否認

なぜ、「ペテロの葬列」という題なのか。歴史・芸術に関しては無知なので小説のなかで答えを見つけたときはとても感激した。

杉村三郎が妻の菜穂子と展覧会に行ったときに購入した画集の中に「聖ペテロの否認」というのがある。

イエスの一番弟子だったペテロは何度もイエスを裏切るが嘘を背負って生きていくことはできない、と彼の命を懸けて彼がついた嘘を悔い改めた人物。と説明があった。

ああ、まるでこの物語が言いたいことすべてを表しているような気がする。

悪徳商法は極端な例だが、これは人間の本質を説いている。ぞっとした。

杉村三郎と菜穂子

今回の小説で唯一腑に落ちないところはこの二人の結末である。

できることなら、今回もほのぼのとした3人家族の仲つつましい様子で終わってほしかったというのが私の希望である。

橋本さんと菜穂子の様子はほとんど文中にでてこなかった(井出さんの目撃情報と菜穂子の自白証言)から、橋本さんがどういう人物で菜穂子とどういう風に会話を交わすのか全く情報がない。

私は彼をどうイメージすればいいやらわからなかった。

まあ、この小説は杉村三郎視点で完結しており当の本人が最後まで全く気付いていなかったのだからしょうがないけれど。

菜穂子は、自分が我慢しなきゃいけないところも全て杉村が守ってくれて我慢してくれて何も苦労することがなくて毎日楽しかったのだと言った。

同時に事件や仕事につきっきりの杉村にヤキモチを抱き前野嬢に嫉妬していた。そんな自分が嫌で、本当は、夫婦のように苦しみを共有したかったし、同じ風景を眺めたかった、と。

あなたの自由のために私たちは離れなければいけない。

菜穂子は、杉村がいくら職場で嫌な気持ちをしていて家でも義父や兄弟たちに気を使って孤独を感じていても、家族団欒を毎日心のよりどころにしていたか知っていただろうか。

文中で、杉村が今多コンツェルンに嫁いだのも自分の逃げではないのかと考えていたこともあった。彼は一体何を考えていたのだろう。

人の心情を理解するのは難しい。私が鈍いだけなのだろうか。

もう一度読み直して嗅ぎ取とりたいものだ。

最後に

ハッピーエンド好きの私にとって、後味は決して良いとは言えませんが、私の知らなかった世の中の闇というのがまた私の中で明らかになりました。

宮部みゆきさんの作品を読んでいると、新しい発見があります。

普段生活していて体験することのない、出会うことのない人の様子を覗くことができるのです。

ひそかに自分自身の教訓になったりもしています。

ありがとうございました。

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