父親の浮気癖と父を庇い続ける義母に嫌気がさし、家を出ていった母親。
紗登子は祖母からの重い重圧に耐えきれず、弟を一人残して家を出た。
イラストレーターの仕事を諦めきれず男の人にすがりながらもなんとか生きてきた彼女が14年ぶりに私を捨てた母親と再会する—-。
著者、窪美澄が描き出す「家族」の姿
『クラウドクラスターを愛する方法』と『キャッチアンドリリース』の二篇で構成されている本作は、どちらも主人公たちが「家族」、「自分の居場所」について考えている様子が綴られている。
血が繋がっていて、そこに確かな絆があるはずなのに、空っぽで…時に簡単に壊れてしまう家族。
窪美澄さんは、重たいテーマをよく扱う。物語の中で特に登場人物たちが幸せになるでもなく大きな希望が訪れるわけでもない。暗い気持ちで読み終えてしまう作品も少なくないだろう。
本作でも両親の離婚や再婚によって居場所を無くした子がさまざま登場する。過去の後悔や行き場をなくした怒り、シガラミを抱えながら、今も自分の居場所=帰る場所を求め生きていく。
家族ってなんだろう。苦しい思い、悲しい思いをするかもしれない。なのに家族を欲しがるのはなぜだろう、と考えさせられてしまう。そう、とても当たり前で根本的なこと。
ーー 幸せになりたいから。
幸せになれる確証なんてないし、確実な約束なんて存在しないじゃないか。
それでも、人は家族をつくる。
子供の頃でも大人になってからでも、「家族」に対して問題があったり、悩みを抱えている人は一度本書を読んでみて欲しい。決して、家族の必要性について言及していないところに深く魅力を感じた。そこに希望を感じる読者も多いはずだ。私のように。
(ネタバレ)クラウドクラスターを愛するとは
タイトルにもあるクラウドクラスター。
これは物語のなかで、主人公・紗登子の母親の3姉妹のうちのひとり、克子おばさんが紗登子の母親(長女)のことを例えたときに用いられたものである。
側から見ると夏らしさを感じる入道雲のかたまり。でも、その下では激しい雨や突風が吹いている、そんな雲。
家族を守るために大暴れしたりお見合い結婚を選択した母親。
母親の家出を死ぬまで許さなかったおばあちゃん。
母親の気持ちは分かってるのに母に怒りをぶつけてしまう自分。
血が繋がっているのに…友達より恋人よりも近いはずの家族なのに、うまく心が通じ合わない。
そんな彼女に克子おばさんが言う、…
「誰がどう言おうと、さとちゃんが感じたことだけがほんとなんだよ。
さとちゃんはさ、もっとまわりに怒ったり怒鳴ったりしてもぜんぜんいいと思うよ。ときには荒れ狂う雨や風もないと、青空は見えないもんなんだよ。」
感じたことを言葉で表現する。簡単なようで難しい。ましてや、自分を棄てた母親が相手だと有り余るほどの感情をどう放出していいのかわからない。
クラウドクラスターを愛する方法。
自分らしく感じたことを伝えられればいい。少しずつ。
それが自分自身や
他のクラウドクラスターたちを愛するための方法ってことなのかなと解釈することにする。
最後までお付き合いありがとうございました。
本日も良い1日をお過ごしください。
れんげ
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