本日は、恩田陸さんのライオンハートという小説をご紹介させて頂きます。
恩田陸さんは、私の中でなかなか消化が困難とされる書籍作家さんの一人です。
一筋縄ではいかなく、何度も何度も読み返すたびに理解が深まり新たな発見もある。そういったところに魅力を感じているのか、毎度手にとって読みふけってしまうのです。
この「ライオンハート」もさらっと読めるものでもなく、熱いコーヒーを淹れて静かな部屋の中でじっくり読んでいいきました。
ストーリー
舞台は私たちの世界とはどこかかけ離れている異世界感漂うロンドン、シェルブール、パナマ、フロリダ…しかも、戦争があり、王様やお姫様が出てきたり、はたまた近代の街が出てきたりと様々な時代の情景に出会えるところが魅力的です。
まさに恩田ワールド。
誰かの意思が働いているのか。神のおぼしめしなのか、気まぐれなのか、手違いなのか。でもこうして現に起きている
時空を超えて何度も出会う二人、エドワードとエリザベス。二人に許される時間は毎度ほんの一瞬という短い時間しかない。それでもなお、お互いを求め合い、次の一瞬を楽しみにそれぞれの道を歩んでいく。決して結ばれることのない純粋で切ない究極の恋愛ストーリー。
こんな方におススメ!
・洋風ロマンチックストーリーが好き
・歴史が好き(ヨーロッパやアメリカなど海外)
・深く考えて余韻に浸りたい気分
読みやすさ
すらっと頭に入ってくる内容ではなく、世界観、情景をじっくり思い描きながらゆっくりと読み進めていきたい一冊。登場人物が全て横文字名なので少し馴染み難いかもしれません。
しかし、読みやすい字列や会話も多いため決して理解できないということはないです。
感想 -お気に入りの言葉-
ここから私が選んだ台詞や文章とともに、この本の個人的な感想と考えさせられたことをそのまま、徒然なるままに記していきたいと思います。
ところどころネタバレがありますので、未だ読んでないという方は読書後にまた戻ってきて頂けると幸いです。
第一章 エアハート嬢の到着
”あたしはあなたで良かったわ。いつもあなたを見つける度に、あなたに会えて良かったと思うの。いつもいつも、会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ。”
最初にエドワードとエリザベスが出会うシーンである。
何も知らないエドワードと、もう既に何度も会っているというエリザベス。
いきなりの無謀な登場に私は驚いた。これこそ、非現実的な映画などで見る“運命的な出会い”のようだ。
そして、両者ともなぜこんなことになっているのか、深く追及しないところがまたいい。
運命なのだからと片付けられる単純だけど「美しい」思想。情熱とか本能とか、そんな言葉が浮かんだ。
この台詞を読んだときに毎度思うのは、私もこんな風に真っ直ぐな言葉を素直に言えたらいいなと思う。
今は、社内でのeメール、プライベートではLineやTwitterやら、スマホで会話することが定着してきてとても寂しいなと思うときがある。となりにいるのに、怒られるときも冗談を言うときもチャットやメール。
恋人や両親に想いや感謝を伝えるとき、別れを告げるときもラインメッセージで完結してしまう。そりゃ、楽だし、手っ取り早いかもしれないけど、、、
自分の声で、口で、相手に伝えてこそ言葉の効果が発揮され意味が確かになっていくものだと信じたい。
恋人だったらきっと、お互いへの想いをより深いものにする効果もあると思う。
話がずれてしまったかもしれないけれど、そういう二人の関係が素敵。
なかなか会えないからこそ、会えた時に気持ちをはっきり伝える。
簡単にできそうで、なかなかできていないこと。
第二章 春
なぜ、僕たちなんだ。
リンゴの木の下で雨宿りしているフランソワが、戦を終えた青年と出会う。
そして青年が抱くエリザベスへの想いを祖父が記した日記と共に話し始める。
叔父の夢を語る日記が、次々と青年にとって現実となり、今、この瞬間もフランソワの目の前でエリザベスとの再会を果たすことになったのだ。
彼は、この瞬間を超えることのない上の喜びと言っているが同時に、苦しみを感じていた。
「僕たちはなにをしたというんだ。どうしてこんな目に遭わなければならないんだろう」
私は、切なさに胸がぎゅっと締め付けられた気がした。
夢にまで出てくるくらい好きでたまらないのに一生に一瞬しか会えない。こんな悲しいことなんてない。
だが、エリザベスは言う。
「私の心はいつもあなたと一緒にいる。私の魂はいつもあなたを愛している。」
会えないから寂しいとか時間をつくってくれないとか、嫉妬とか小さな理由で恋人とケンカをした記憶がある。今思うと本当に私はその人を愛していたのか疑問である。
エリザベスのような女神のような心を持つことが難しいことはわかっているが、本物の愛(人を愛することはどういうことなのか)とは相手の全てを受け入れどんな状況にも屈しない強い想いなのだ。
第四章 天球のハーモニー
あなたの魂は何物にも所有されることを望まない。誰かと結びついたとたん、たちまち濁り始め、輝きを失う。離れているからこそ純粋でいられる。
第4章の天球のハーモニーは、エリザベスがエドワードのことを必死に思い出しているシーンである。
私自身、正直未だに完全消化しきれていない。とても興味深いと思った。
エドワードという存在が完全に一人の男だと思っていたが、“歴史のページに消えていった老若男女たち”というではないか。しかも、苦しみ、悲しみ、怒りを味わいながら血を流していった者。
彼らの魂はやがてエリザベスの魂の一部になり、エドワードというエリザベスの平和の心の拠り所となっていったのか。
これは夢なのか現実なのか、必死になってお互いを探して、夢の中にあらわれて、また追いかける。そういったことを繰り返す2人は徐々に気づいていくのだ。なぜ、一緒になれない訳に。
最後に
いかがでしたでしょうか。
お互いの姿を見つけた瞬間の喜びというのを感じずにはいられず、つい二人の永遠の幸せを願ってしまう。この物語にはたくさんの解釈があると思うし、全部が正解なのだろうと思います。
いつか誰かと共有したり意見を言ってみたり、私の中のストーリーを膨らませたらいいなと思います。
中世的ロマンチックな物語が好きな方には、ぜひオススメしたい本です。
学生恋愛のようなキュンという感じではなく、深くてずっと余韻を楽しめるような大人な恋愛。
食べ物でいうと高級レストランで味わうフレンチのような、口の中でコロコロ転がしながら味わって楽しむ感じ。
心に残っていることば、共有して頂けたら幸いです。
ありがとうございました。