本日は、恩田陸さんの「ネバーランド」という小説をご紹介します。
恩田陸さんの本は、私が小説の世界に魅了されるようになったきっかけともなる作家さんです。
彼女の世界観や文章の書き方は、いつも私に驚きを与え、読者の心をを完璧なまでに引き込んでしまう不思議な力があると思っています。
ストーリー
有名男子校の伝統ある寮「松籟館」で、生徒4人の長いような短い共同生活が始まった。
冬休みを迎え生徒たちは次々と帰省していく中、寮に残ることを決めた4人。
ある夜のツーテンジャックゲームをきっかけに深まる4人の謎と芽生える絆。
行き場のない彼らが明かした秘密とは一体…
事情を抱えた少年たちの7日間の感動の青春物語。
こんな方におススメ!
・ちょっとしたミステリー物が読みたい
・寮生活を経験したことがある
・余韻がのこるようなシリアスで感動する物語が読みたい
・恩田陸ファン
読みやすさ
本の厚みは薄く、章分けされているためとても読みやすく、ストーリー自体も難しくありません。
登場人物も最初から最後まで男子高校生4人にフォーカスされているため、混乱せず分かりやすいです。
ただ、恩田陸さん独特の表現の仕方(言葉や会話が直接的ではなく、本当の意味を読者に考えさせる)を含んでいるため、ハマってしまう人もいれば、難しいなと感じる人もいると思います。
私はそこが物語の良さだと思っていますが。
話の展開が読めず、衝撃的なところもありますので飽きることなく一気に読めてしまいます。
見どころ
やはり、男子高校生4人それぞれの悩みや辛い過去の重みに驚嘆してしまいます。
その経験からか、とても大人びた考え方を持っていて自身を理解しているところがどこか高校生離れしているイメージを受けました。
コーヒーやお酒をを毎日よく飲むところも子供らしくない直接的な比喩でしたがw
そういう彼らの受け答え、他人に対する観察力などがとても面白いと感じます。
感想
ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。
誤字脱字や稚拙な表現が目立っていると思いますが、よかったらどうぞ優しい目で覗いて行ってくれると嬉しいです。
ネタバレを含んでいますので、先に読了をおすすめします。
悩み
この物語にでてくる少年たちの過去が壮絶すぎて、私の今の悩みなんてちっぽけに思えてくる。
きっと、私が彼らと同じ状況だったとき、しかもまだ高校生だったら彼らのようにしっかり地に足つけて生きているのだろうか。
幼いころに父の浮気相手に誘拐されて女性恐怖症になった美国。
小学生の時に母の自殺する姿を目撃してしまった純。
両親が離婚するかしないかの判断を委ねられている寛二。
死んでいった父の死を憎み恨んでいる実の妻に引き取られ強姦されていた光浩。
告白ゲームで明らかになっていく真実は思いのほか重く胸が締め付けられるような気分になった。
美国が以前から感じ取っていた光浩の冷たく冷めた視線やいつもニコニコしてお茶らけている純の本当の素顔など、人は知れば知るほど別人になっていくような気がする。
知るのが怖いと思うと同時に好奇心がわいてきて、誰かの秘密を聞いたことで、自分の秘密も話さなければならないような不思議な義務感。
これは、友情なのか、共犯関係か、何か冷たいものに変わってしまいそうなのを私は必死にこらえる。
光浩が最後、友人たちを弁護士に合わせるシーン。
今ここで要件を話してください。
彼らは僕のことよく知ってますから。
いや、お互いの恐怖や弱みを知ることで、得られる安心感や信頼があるのかもしれない。
それらをすべて受け止めてくれる、そして何か別のものへと変えてくれる誰かが私も欲しい。
余談
個人的に思ったのは、この本の一番最後にある恩田陸さんの”あとがき”まで読んだほうがいい。
普段、本を読んでいても作家さん自身の言葉や考えていることを読める機会はあまりないので、興味津々だった。
彼女は「学校と子供が好きではない」と最初から書いているところがなんだかおかしい。
これが彼女の中にある理想の高校生世界なのである。
それぞれの登場人物に対する思い入れがあり、この作品は彼女がこれから書いていく小説の「原型」になる重要なものだといったとき、そんな作品に出合えたことが私にはとてもうれしかった。
私はこの作品がとても気に入っている。
この先、何度も読み直すと思う。
読むたびに、私自身の発見もあるから。
最後に
私は美国に似ているなと。
怖がりなところや、臆病なところ、他人との駆け引きが苦手なところ。が。
恩田陸さんは彼のことを「いい奴だがまともすぎて、書いていて物足りない」と話していたので、思わず笑ってしまい
ました。
あまり話題に上がらなかった作品でレビューをみていてもあまり良い評価をつけている方が多くないですが、私はとても好きです。
恩田陸さんの魅力満載です。
是非、読んでみてください。
ありがとうございました。
れんげ