こんばんは。
今夜は、小川糸さんの「蝶々喃々」という長編小説についてレビューしていきます。
「食堂かたつむり」の印象が強い小川糸さん。
やはりこの作品も彼女が描く食の魅力がたくさん味わえました。
少し長いですが、読み応え抜群の一冊です。
ストーリー
東京・谷中でアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む栞(しおり)。
きものを求めるお客ばかりでなく、ご近所さんもふらりと訪れては腰を落ち着ける、小さなこの店に、ある日、父とそっくりの声をした男性客がやってくる。
その人は、栞の心のなかで次第に存在感を増していき――人を大切に思う気持ち、日々の細やかな暮らしが、東京・下町の季節の移ろいとともに描き出される、きらめくような物語。
谷中・根津・千駄木近辺に実在するお店や場所も多数登場し、街歩き気分も楽しめる作品。
『食堂かたつむり』で鮮烈なデビューを果たした小川糸の第二作。
【喋々喃々(ちょうちょうなんなん)】男女がうちとけて小声で楽しげに語りあう様子。(Amazon)
こんな方におすすめ
・純愛100%の大人のラブストーリー
・美味しい料理がたくさん
・長編小説が読みたい
・東京の下町の暮らしがよく分かる
読みやすさ
一見、本の分厚さにたじろいでしまうが読み始めると、細かな章分けと美味しそうな食事シーンの数々でスラスラ簡単に読めてしまいます。数えてみると、12章でした。
本の中で下町の風情と四季を感じながら、ゆっくり読みたい一冊です。
ストーリー展開はゆったりワクワクしながら進んでいきます。
見どころ
内容として注目していただきたいのが、主人公の栞と春一郎さんの恋の行方。
妻子持ちの春一郎さんに恋してしまう栞が、淋しさで胸を痛めている様子はとても切なくて自然と涙が出てきます。
大人のラブストーリーだけど、栞の純粋さに共感してしまう方は多いのでは、、
続きが気になります。
そしてなんといっても、料理・食事のシーン!
この物語の大半を占めているといっても過言ではありません。
春一郎さんとのお酒をちびちび飲みながら食べる様子や、イッセイさんとのデートで食べる天丼。
そして栞の上品かつ食べっぷりの良さは、読んでいてそそられました。
感想
ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。
誤字脱字や稚拙な表現が目立っていると思いますが、よかったらどうぞ優しい目で読んでいただけると嬉しいです。
※ネタバレあります。
人を好きになるということ
栞をみていると、若かったころの自分を見ている気持ちになる。
ああ、この気持ちわかる。
私もそうだったな。
そして、いまも…そう!そうなんだよね!
なんて共感したり、納得しながら読んでいた。
栞の場合は“古典的な日本人女性代表”のような奥ゆかしく、極めて控えめな印象が強いのだが、片思いをする辛さ、寂しさは根本的にどんな女性でもわかる感情なのではないか。
彼が生きてくれたらそれでいいと思いながら、言葉とは裏腹に、私は春一郎さんに誘われればどこへでものこのこでかけてしまう。
__p165
「駆け引き」という言葉がなぜ存在するのか、憎らしいほど、苦手な私にとって栞の言動は、とても理解できた。
悔しいけど、自分の気持ちに嘘はつけないんだよなあ。
弄ばれているとわかってながらも、連絡がきたときには、心のどこかで飛び跳ねている自分がいると悲しくなったのを覚えている。
___恋は盲目。
でも、色んな人と出会い別れを経験すると、ふと、その人のことをどんなに好きになろうと自分を守ることを優先できるようになる。
傷つく自分を知っているからだ。すぐさま防御態勢に入ろうとする。
それは大人になった証、強くなった証と誇るべきこと?だとも思うけど、もう昔のように夢中になることがないんだと悲しくもある。
どこか現実を見据え、あきらめている自分がいる。
栞のこれまでの恋愛はどんなだっただろう。
雪道君とのエピソードも、ほろほろ書いてあるが本当に彼のことが好きだったんだなということが伝わってくる。
彼も彼女のことをずっと大切に想っていたんだろうな。
最後、春一郎さんに対する栞の大胆な行動は、これまでの栞からは想像もできなかったので少々驚かされた。
春一郎さんは栞と一緒にいると決意して戻ってきてくれたことを、ただ祈ろうと思う。
最後に
切なく、甘いラブストーリーが素敵でした。
着物、茶室などへの興味のきっかけともなったと思います。
栞みたく、着物をサラッと着れて街を歩けるような、そして料理の手間を惜しまず一から作るような女性になりたいなとしみじみ思いました。
日暮里の街並み、今度ゆっくり歩いてみようかな。
おススメの一冊です。^^
それでは、このへんで。
れんげ