本日は、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」をご紹介させてください。
私はこの小説を読むのをとても楽しみにしていました。楽しみすぎて、読むのがもったいなくてなかなか手を付けられない、
という意味不明な心情にかられていました。
楽しみが無くなってしまうのが嫌だから、後に後にとっておこう。
私はそういう性格です。ショートケーキのイチゴはいつも最後に食べます。
とはいっても、買ってきて2週間目で読み始めてしまいましたが。
ストーリー
「お前、走るの、好きか?」
走りにすべてを賭けてきたハイジと陸上という競技から退く決意をした天才ランナー、走との出会い。
”走る”ってどういうことなんだ。”走る”ことで何が得られるんだ?
自分でしか見いだせない答えを探しに走り出す。
個性豊かな青竹荘の面々との友情。共に特訓を乗り越え、駅伝という競技に全員が魅せられていく。
彼らが見た頂点の景色とは一体…
寛政大、即興陸上部が初の箱根駅伝へ挑む。
こんな方におススメ!
・学生時代に部活をやっていた人
・熱い友情、青春物が好きな人
・箱根駅伝含め、関連番組が好きな人
・長距離を走るのが好きな人
・何かに熱心に取り組みたい
読みやすさ
長編小説です。章で分かれているので、休憩しやすく読みやすいと思います。
後半の約半分は駅伝本番の様子が中継のように書かれているので休憩せずとも、一気に読めてしまいました。
登場人物それぞれのキャラクターがとてもたっていますし、ストーリー展開も強弱があって飽きません。
会話もそれなりに多く、個々の心情や場面ごとの臨場感や空気なども感じ取れるくらいの鮮明な文章です。
見どころ
涙を誘うところ、くすっと笑ってしまうところ、懐かしいと感じるところ、緊張するところ、様々な表情を持った小説です。
見どころはたくさんありますが、恋愛とはまた違った青春時代の懐かしさを思い起こさせてくれます。
特に、物語の前半と後半の青竹荘のメンバー全員の変化かなと思います。
この1年間の厳しい特訓やメンバー同士の関わり合いの中で、どんな心情の変化があったのだろう。
箱根駅伝本番では、それぞれの区間ごとにメンバーのこれまでの人生や抱えている悩みが明らかになっていきます。
一人一人のストーリーの中で涙で前が見えなくなりました。
そして!とにかく、ハイジさんがかっこよすぎます。
最後のエンディングも温かい終わり方が好きです。
感想
ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。
興味のある方は覗いていってくれると嬉しいです。
ネタバレを含んでいます。もし、読了していない方はどうぞ先に読んでみてください^^
もし、気が向いたらこちらに戻ってきて頂けると幸いです。
長距離を走るということ
私にとっての箱根駅伝は、毎年、お正月にテレビでみる”一つのイベント”にすぎない。
きっとほとんどの人がそうだろう。
中学生の時に陸上部に入部し、短距離を選択した。種目は違えど、実際に近くで長距離選手を目の当たりにしていた。
自発的に自主練に取り組み、毎日想像を超える距離を毎日走っていた。
そして私は当時、長距離を走る人の気が知れなかった。理解ができなかった。
なぜそんなにのめり込めるのだろう、
辛くて苦しい思いを長時間してただ、走るだけなのに。
楽しいわけがない。
この小説を読み進めていると、彼らがそこまでして走ることにこだわっている謎が解けた気がした。
それは、勝ちたいからとか、記録を更新したいとかそんなことではなくて、もっともっと深い。
というよりは、シンプル。という方が妥当か。
六道大の藤岡や走、ハイジのように、どこかにある自分のためのゴール地点を探して、見つけ、目指していく。
彼らの描く”走り”の理想を実現するために。
この小説を読んで、駅伝に対する見方が360°変化した気がする。
そして、この考え方は私たちのーー”生きること”ーーに繋がっているのではないか。
王子、ムサ、神童、ユキ、双子、キング、ニコチャンも完璧に走りぬく走と、等価で平等な地平に立っているように、それぞれに異なる答えがあって、目指す理想があるのだ。
六道大の藤岡の言葉が今でも私に響いている。
日本人選手が一位になれば、金メダルを取れば、それでいいのか?断固として違うと、俺は確信している。
競技の本質は、そんなところにはないはずだ。たとえ俺が一位になったとしても、自分に負けたと感じれば、それは勝利ではない。
タイムや順位など、試合ごとに目まぐるしく入れ替わるんだ。世界で一番だと、誰が決める。
そんなものではなく、変わらない理想や目標が自分のなかにあるからこそ、俺たちは走り続けるんじゃないのか。
最後に
なんだか真面目なことばかり書いてしまった気がしますが、想像以上の作品でした。
何度涙が出てしまったことか。青春って素敵ですね。
私もスポーツに真剣に取り組んだ時期がありまして、共感できる箇所がたくさんありました。
今度箱根駅伝を見る際は、何を思いながら見るのだろう。と今から楽しみです。きっと、この本を思い出すんだと思います。
そして、駅伝を見終わった後にまた読みたくなるのかな。
最後まで見て頂きありがとうございます。
れんげ