神から音楽を宿命づけられた少女と選ばれなかった自分。
音楽に囚われ支配される者が行き着いた先に見たものは…
れんげ
今回読んだのは、篠田節子さんの『ハルモニア』です。
脳に損傷を負い、人格がなく、言葉を発せない女性・由紀は、超人的な音楽の才能を持っていた。指導を頼まれ、施設を訪れた東野はその才能に圧倒される。
名演奏を完璧にコピーしてみせる由希に足りないもの…それは「自分の音」だった。
東野は施設でしか生きられない彼女を救い出そうと、
彼女自身にコピーではなく「自分の音」を見出そうと奮闘するが、それを拒むかのように不可解な事件が次々と起こる。
れんげ
【感想】才能への妬みと憧れ。音に魅せられたプロ音楽家たちが目指す境地とは…
本作では、最後までヒロイン・由紀の気持ち(本心)が語られることはありません。
そこがこの物語の最大の落とし穴であり、
同時に最大の魅力なんだろうと思います。
他人の身体を使ってでも表現したい、創り出したい何かがある。
今までの努力をどんなやり方でもいいから形にしたい、自分の生の意味を証明したい…
過剰なまでの情熱なのか、使命感なのか、
才能という壁に阻まれ、それでもチェロの世界にしがみついてきた主人公が
天才という未知と出会い、彼の中で何かが起きるのです。
チェロを始めたばかりの少女にあっという間に追い抜かされていく恐怖・嫉妬・怒りを超えて彼の心を占領してしまった感情とはいったい…
ーーー正気なのはどちらか。
彼女を高級なパンダの檻に入れ続けている施設側か、
それとも一刻も早く才能を開花させたい講師か。
由紀は天才として脚光を浴びるよりも
「自分の人格」を持つことよりも
ただ平穏に自分の世界の中だけで生きていたかったのではないか。
誰も答えを与えられない状況で、皆が自分勝手にことをすすめていく展開に
腹立たしさを感じると同時に人が生きていく原動力の塊を見ているような不思議な気持ちになるのです。
”僕は彼女を借りて、僕の生の意味を持たせることができた”
何かに取り憑かれたように彼女にチェロを弾かせようとする主人公が恐ろしく強烈でした。
音楽の世界は深い。
プロたちが求める自分の音と観客から評価される音の違い。
それはきっと、その道を極めている人にしかわからない境地。
芸術家や音楽家たちが持つ秘められた野心…
自分の理想とする音を生み出すために命を躊躇いもなく削っていく
理解し難い狂うほどの愛情。
観客や他人の評価なんて眼中になくて、
ひたすら自分と向き合い、自分を壊していってしまう人の思考回路を覗ける本作は、
ホラーそっちのけで人間の本質が描かれた傑作でした。
人間の内に秘められた怖いくらいに強い力、
この異常さと奇妙さがクセになります。
ラスト…これが彼らの「幸せの形」、なのでしょうか。
あなたはどう思いました?
最高の没入感。
読み応え抜群です。
最後まで読んでいただきありがとうございます(*´꒳`*)
今日も素敵な読書時間をお過ごしください✨
れんげ
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