本日は、瀬尾まいこさんの「幸福な食卓」を紹介していきたいと思います。
この本のタイトルにとても魅力を感じ、手に取っていました。
読む前にまず頭に浮かんだのは、“家族団欒”“お母さんの手料理”“ご馳走”など幸せな気持ちにさせてくれるお話かなと勝手に想像していました。
第一章からどんでん返しという感じで、私のイメージはあっけなく覆されてしまいますが、、苦笑
でもとても感動的で題名通りな物語という印象を受けました。
瀬尾まいこさんの他の小説も読んでみたいです。
スト―リー
アパートで一人暮らしをする母親。
突然、お父さんをやめると宣言する父親。
元天才児だけどフリーターな兄。
主人公佐和子の家族はどこか変わっている。変化に囲まれながら暮らす佐和子は一体何を思っているのか。
一度離れてしまった家族は再生可能なのでろうか。
家族というつながり、絆の本当の意味を問う。
こんな方におススメ!
・ あの頃の家族団欒が懐かしい
・ 現代的な家族の在り方を知りたい
・ 中学生の素直な恋にキュンとしたい
・ 心が温まる本が読みたい
読みやすさ
この物語は四章で構成されていますが、全ての章がひとつながりの内容なので一気に読んでしまった方が理解しやすいです。
というか、厚さといい内容といい、とても読みやすい本ですのでつい一気に読んでしまうと思います。
会話文がとても多いですし、説明文もわかりやすく登場人物の性格などがイメージしやすいです。
みどころ
先ほども触れましたが、登場人物同士の対話の描写がとてもよく書けていると思います。
佐和子の家族についてがメインとなってきますが、佐和子のボーイフレンドである大浦くんとのストーリーは際立って素敵です。
個人的には一番好きです。
二人の日常的な関わり合いは面白おかしく、またとっても可愛らしくて、キュンとしてしまいます。
とても切ない終わり方ですが、佐和子に対する大浦くんの純粋な気持ちに心を打たれます。
感想 –お気に入りの言葉とともに
ここからは、私の個人的な感想や印象が特に強かった場面・セリフなどを思いのままに残していきたいと思います。
ネタバレがあります。
もしまだ完読していないという方は、どうぞ先に本を読んで見てください。そして、気が向いたらまた遊びに来ていただけると幸いです。
兄の直ちゃん
ある程度、役割は必要だってこと。役割を果たすことで、生きてる実感が湧くし、みんなが役割を果たすことで、いい環境が作られる。
兄である直ちゃんが、今の家族状況は良くないと直感し、佐和子に提案しているシーンである。
普段は、突然鶏を連れて来たり、直ちゃん自作の意味不明な歌詞が添えられた歌をギターに乗せて歌い続けたりと、これまでどこか抜けていて自由奔放な印象を纏っていたのだが、やはり元天才。
佐和子が感心するだけある。
自由奔放な言動の裏側にはきっと彼なりの考えと広い心があるのだろう。
バラバラとも言える家族は兄の寛大さとその人間性が繋ぎ止めているのかなと思った。
恋愛に関しては、全然初心者そのもので不器用なところもまた魅力的であるが。
さて、彼のセリフに戻るが、私も賛成である。固執しすぎても悪影響であるが人は生きる上で何らかの使命や役割を持つことで生きようとする生命力が湧き上がってくると思う。
仕事でも家庭でも学校でもどんな場所でもそれはある。
それを自分が理解するということは自分という存在をその場で確立しているのではないだろうか。
ボーイフレンド 大浦くん
今の大浦くんの愛情がちゃんと続いて欲しいなら、私もちゃんと大浦くんを好きでいなきゃだめだって思う。
大浦くんの真っ直ぐな佐和子への愛情表現に安心と不安の両方を抱いている佐和子は、相手に対しての彼女自身の気持ちに気づいていく。
彼女たちの恋愛はとても純粋で読んでいてとても気持ちがいい。
大浦くんは思ったことをそのままはっきり言う男の子という現代っ子ぽくない素直なところがいい。
二人が入るパラソルのような巨大傘を買ってしまうところ、
佐和子の真似をして電動自転車を買い塾に一緒に通おうとするところ、
でも、かっこよくないからと普通の自転車を用意してアルバイトの新聞配達をするところだったりと
大浦くんの明日羽への大好きな気持ちがとても分かり、一つ一つの彼の言葉、行動にキュンとする。
この小説全体の中で、大浦くんと明日羽のシーンが一番気に入っていて何度読んでも心がほころんでしまいます。
終盤の大浦くんの突然死は、とても悲しく衝撃的だった。
さらに、大浦くんの母親から渡された佐和子への手紙は追い討ちをかけるように私の目を濡らした。
この物語の最後の最後まで、大浦くんは大浦くんだった。
お父さん
父さんにとって、ちゃんと生きるってことは父さんとして生きることだって思った。父さんは父さんで、やっぱりそういるのが一番落ち着く。
この物語の中で最も思い切った行動・人生の転換を経験しているのは、この父親だと思う。
会社を辞め、医学部受験に何度も挑戦し、予備校のアルバイトを始め、過去に自殺未遂を起こしたことがあるという何とも波乱万丈の人生である。
「過去の自分(父さんというもの)にとらわれるのが嫌で今までの自分を捨ててみた」と言っているが、一体何が嫌だったのだろう。
毎日同じ一日を繰り返している自分が嫌になったのか。
本当はやりたいこと、できなかったこと、後悔があったのか。
いずれにしても、家族がいて配偶者である父親がパッと行動するのは一般的に考えてとても難しいだろう。
そういう点で、佐和子の家族は変わっていて常識という枠にとらわれていない。この物語によって私の中の日本の父親・母親に対する先入観が一変した気がする。
とてもいい意味で。
家族というのは(特に父母)一緒にいなければいけない、世話しなければいけない、毎日働いて働いて安定した給料をもらい続けねばならないというある種の契約まがいな固定観念に縛られがちである。
少なくとも私の身の回りでは。
父親にも母親にも自分を見つめ直す時間、機会は必要である。
相談にのって欲しいときや何かに挑戦したいと思えた自分を、一番近くにいる人に温かく見守って欲しい、応援して欲しい、そういう存在が家族ではないのかなと思う。
愛情があっての家族関係でありたい。誰かが一人苦しい思いをしてるより、メンバー全員が充実した満足できる毎日、少しでも多くの“楽しい“の瞬間を共有したい。
そんな家庭が築けたらいいなと願う。
最後に
これから家族を築いていこうという方、家族ともっとコミュニケーションがとりたい、仲良くなりたいと思っている方にこの本をぜひ、読んでいただきたい。
何か得られるものが必ずあるはずです。あなたにとって、家族とはどういう存在ですか?
子供の頃の記憶と自分が家庭を築いていく側に立った時の想いは多少異なると思います。
私は、まだ夫も子供もいない状況ですがこの本で新たな考え方を得られた感じがします。
想像以上でした。