【感想】江國香織「きらきらひかる」を読みました。

本日は、江國香織さんの小説「きらきらひかる」について話させていただきます。

江國香織さんの本は前々から興味があったので、この本を選びました。まず最初に感じた感想は、”こんな恋愛の仕方ってあり?” でした。

何とも理解し難い人間関係というか登場人物の構図は現代ならではという感じで、私は終始、異世界あるいは新しい世界を覗いているような気分で読ませていただきました。賛否両論さまざまだと思います。

みなさんの率直な感想はどうでしたか?きっと若い子には、そこまで異様には写らないのかなとも思ったり、私のお母さんが読んだらきっと困ってしまうのかなと考えたり反応を聞きたいなと率直に思いました。

ストーリー

アルコール中毒の妻と恋人がいるホモの夫の結婚生活の様子が淡々と書かれています。

お互いが抱えているものすべてを許し合い結婚生活をスタートさせたわけだが、少しずつ噛み合わなくなっていく現実。笑子は、夫と紺との思い出話を聞きたがる。

医者であり夫の睦月の恋人、紺との3人の奇妙な関係はどのように変化していくのか。

私たちは、何のために結婚したの?

子供を作りなさいと周囲に言われ、疑問を抱き始める笑子がたどりついた答えとは一体…

こんな方におススメ!

・何か物語を空いた時間にサクッと読みたい
・同性愛者の異性との結婚生活に興味がある
・異色ラブストーリーが好き
・近代の恋愛の在り方について考えたい

読みやすさ

ストーリー
(2.0)

構成
(3.5)

登場人物
(3.5)

Total
(1.0)

基本的には笑子か夫の視点から物事や人物が書かれているので一貫性があります。

本はとても薄くすぐ読み終えてしまえますが、テーマ・内容の重さを消化するのに時間がかかります

というのも私の場合は、異性が好きで好きな人と結婚し、好きな人との子供もほしいと考えているため笑子の価値観とは異なるからかもしれませんが。

みなさんの意見を聞かせてください。

とても明るい内容とは言えませんが、出てくる登場人物のキャラ設定がとても凝っているなと思います。

あらゆる要素がこの一冊に入り組んでいて、頭がパンクしてしまいそうになるので、一気に読むというよりは休憩しつつゆっくりと読むことをお勧めします。

見どころ

タイトルからは想像しがたいテーマに驚かされ、とても興味深い題材です。

特に、お酒に酔った笑子を毎回優しく相手する睦月を見ていると患者を診ているお医者さんのように思てきて、彼らの結婚生活への疑問に拍車をかけます。

また、ホモに対する社会の反応もストレートに描写されていて、日本での同性愛への理解はまだまだ難しいのかななどと考えさせられます。

優しい睦月さんが入れるコーヒーと夜勤明けに持って帰ってきてくれるたくさんのドーナツが美味しそう。

感想 -お気に入りの言葉を添えて-

ここからは、私の個人的な感想や印象が得に強かった場面・台詞などを思いのまま書き残していきたいと思います。

ネタバレがあります。もしまだ完読していない方は、どうぞ先に小説を手にとってください。そして、気が向いたらまた遊びに来て頂けると幸いです。

睦月と笑子

睦月の体温、睦月の心音。私は子供みたいに安心な気持ちになった。私と睦月は一度も性交渉をもったことがないけれど、睦月のからだは私のからだに、ほんとにさらっと自然になじむ。

私はまだこの二人の関係を100%理解できたとは到底思えない。そして、この先もたぶん無理かもしれない。

一章目から二人の会話を読んでいると衝撃の連続である。

「僕たちは、恋人をもつ自由のある夫婦なのだ。」
「笑子にも恋人が必要だよ。」

え、どういうこと?

好きな人には他に好きな人がいて一生独占できないと分かっていて夫婦になるの?

私だったら傷ついていく自分が目に見えて毎日が悲しくなると思うから、きっと一緒にはならない。

もしかして笑子は、別に睦月さんのことが好きじゃない…?

いろいろな可能性が頭の中でぐるぐるした。

多分、本人たちにしか分からない感情、というか気持ちの整理、拠り所があっての行為であって、第三者が入り込めない空間なのかもしれない。

人間の感情というはとても複雑で気まぐれである。

お互いの承諾の上での結婚だが、やはりどこかで傷ついていて相手に八つ当たりをしてわんわん泣いている笑子をみているといたたまれない気持ちになった。

情緒不安定さは、アルコールからのものなのか、この環境が原因なのか未だに分からないけど、きっと両方あるのかな。。

同性愛者への理解

時間は流れていくし、人も流れていく。変わらずにはいられないんだよ。

子供の話を周囲からしつこく促され、壊れていく笑子を見ていられなかった。そして、正直で純粋な睦月さんは耐えられなかったのだろう。

笑子の親友に同性愛者であること、恋人がいること、それを承諾の上笑子と結婚したという事実を明かしてしまう。

同じ時間が二度と流れない。睦月さんもきっと今までと同じように結婚生活を送ることは難しいことに前々から気づいていたのかもしれない。

私は、結婚というのは二人だけの行事ではないということに改めて気づかされた。

家族や友人の理解があっての幸せな結婚生活なのかなと思う。

その事実は瞬く間に笑子の両親にも知れ渡り、両家同席の親族会議が開かれるのだが、、

この章は深刻で緊迫感が張り詰めている様子が文章を辿っているだけで伝わってくる。

そして、同性愛者に対する理解の乏しさや偏見がとても顕著にダイレクトに描かれている。

”おんなおとこ”。”根本的に結婚の資格がない人”。笑子の両親の気持ちを考えると理解できなくもない。きっと、他人事だったらこう過激な反応にはならないのだろう。

最近、やっと若者たちの間で浸透してきた同性愛への理解だが、やはり現実はそう易々と受け入れられるものではないのだろう。

何も反論せず、ただ黙って相手の罵声を浴び、さらに睦月さん両親が睦月さんのために謝ったり反論してくれたりしているのを横目で見ている睦月さんを想像するととても心が痛んだ。

結局、みんなには嘘をつく(恋人:紺と別れる)選択肢を選ぶ2人。

これが現実。

悲しいけれど、いつか本当のことを言い両親からの理解を得られるまで正直に突き進む二人であってほしいな。

紺の気持ち

そんな風に相手を追い詰めるんなら、睦月は笑子ちゃんと結婚なんかするべきじゃなかったんだよ

睦月と紺の精子を人工授精で繋ぎ合わせて子供をつくろうと笑子が提案する。それを聞いた紺は睦月を殴ってしまう。

その後の紺の行動も合わせてやっと冷静になり、紺の気持ちを知った睦月。

今までずっと穏やかで感情を表に出さずに2人に接してきた紺だけど、きっと一番つらい思いをしてきたのかなと気づいた瞬間である。

自分と恋人同士の睦月、最愛の人が他の女性と結婚してしまう。一緒にいれない時の不安と辛さ。とても苦しんでいただろう。

睦月と笑子が出会うずっと前から愛し合ってきた二人。さらに、紺と睦月は本物の恋人同士である。

ここの場面がくるまで紺がどんな気持ちで睦月を待っているか、毎日すごしているかに気付かなかった私自身にも腹立たしさを感じた。

最後はとても柔らかくまるまった終わり方だけど、なんだか煮え切らない、切ない気持ちが残る。

最後に

随分と長々と感想を書いてしまいましたが、この小説を読んだあなたはきっと理解してくれるでしょう。というか、理解してくれるといいなと思います。

お見合いで会い、条件が合ったからという理由で結婚をきめたようにしか見えないのですが、睦月が笑子と暮らしている様子を見ていると、どうしてそこまで笑子に優しく
できるのだろうと不思議に思ってしまう節がありました。

結婚、恋愛に答えなんて存在しないというメッセージも含まれているのかな。色んな愛し方があるのかなと受け入れる他ないのかな。

とても切なくて何かに押しつぶされてしまうような気持ちになりました。

この小説はドラマ化もされているようです。後日、見てみようと思います。

また感想かけたらいいなと思います。

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