こんにちは、れんげです。
本日は辻村深月の「凍りのくじら」という作品をレビューしていきます。
どうぞお付き合いください。
彼女の作品の中でトップ3に入るくらい好きな小説です。
私たちに馴染み深い漫画”ドラえもん”要素がたっぷり詰まっていて懐かしい気持ちもしましたし、もう一度漫画を読み返したい気分になります。
ストーリー
藤子・F・不二雄、を愛していた父をもつ理帆子。
幼い頃の父の失踪以来、彼女は「スコシ・ナントカ」と周り人々の個性にあだ名をつける遊びを始める。
学校の友達、飲み友達、元彼氏、闘病中の母と、行方不明の父と、どんな相手にも合わせてしまう、合わせられてしまう。
いつもどこか不在な理帆子。
そ
して突如、理帆子の前に現れた別所明と郁也との出会いが、彼女を大きく変えていく。
ドラえもんに出てくる素敵な“道具”の数々が、静かに彼女を包み込む時…奇跡は起こる。
スコシ・不思議で温かい、感動長編ファンタジー
こんな方におススメ!
・ファンタジーが好き
・「ドラえもん」をよく見ていた
・長編小説が読みたい
・友情/家族愛ものを読んで感動したい
読みやすさ
厚めの長編小説ですが、とても読みやすい!
登場人物の会話も多く、難しい表現が無いと思います。
第十章に分かれていてそれぞれタイトルが「ドラえもん」にでてくる“道具”の名前ばかり。辻村深月さんのちょっとした遊び心かな?
「ドラえもん」を見ていた方はグッと親近感が沸くと思います。
ストーリー内容は、涙が止まらなかったり、ハラハラドキドキしたり、かわいい子供がでてきて癒されたり、と飽きが来ない展開です。
一気読みがおススメですが、道具ごとの章で区切り、休憩をはさみつつ読んでも良いと思います。
見どころ
私の中で印象が強いのは別所明の登場です。
最後の種明かしはすごく納得し、一気に涙腺が緩みます。
それから元カレの若尾…言うまでもない。 一人の傲慢な人間が崩れていく様がリアルに描写されていてとても恐ろしく感じました。
そしてそして、郁也君は私のイチオシです。
彼の優しさ、純粋さ、子供らしさにとても癒されます。
彼らのその後の関係性とかカリスマ性がどう成長していくか気になってしまいます。
感想
ここからは、私が個人的に気に入っている台詞や文を抜き出して自由に感想を書いていきます。
誤字脱字や稚拙な表現が目立っていると思いますが、よかったらどうぞ優しい目で読んでいただけると嬉しいです。
ネタバレを含んでいますので、先に読了をおすすめします。
「凍りのくじら」
物語を読んだ後、このタイトルの意味が分かった時、私は言葉にならない感情が胸いっぱいになった。
氷の下に閉じ込められたくじらの親子のニュース…
最後の一頭のところに行きたかった。どうしてそんなに感情移入したのかわからないけど、そばに行きたかった。
弱っていくのを見てられなかった。—p284
理帆子はその最後の一頭だったのかもしれない。
沈んでいきそうな彼女の傍に行きたいと願った父親の、最後の償いのように思えた。
別所の忠告
人間の脈略のなさを舐めない方がいい。
別所明が理帆子に言った忠告。
カワイソメダルを持った若尾の変貌ぶりは、残酷で痛々しかった。
そして、手に取るように分かる彼の言動に隠された本当の意味を理帆子は面白がっていた。
彼女は最初から分かっていた。
しかし、何も行動を起こそうとせず彼の言いなりになっていた。
でも、そしたら何が正解だったんだろう。
別れた時点で、いやもっと前から距離を置いていたらこんなことは起きなかったのか。
正直、自分でも彼のような人と縁を切れるのか分からない。
他人と関係を持つことって難しい。
自分のなかの「普通」は他人にとってはそうじゃないのだから。
他人を変えようなんて不可能なのだから。
「みんなに理解してもらおうという考えは捨てろ!」
父親に言われたことがある。
当時は、自分が悪いことをしていると怒られた気分がして嫌だった。
でも社会に出て、いろんな人に出会ってみると、父が何を言いたかったのか分かった。
彼は彼なりに私を守ろうとしてくれていたのかなと気づく。
決して他人を侮ってはいけない。
脈絡のなさを舐めてはいけない。
大切な人が傷いてしまう前に、一つ一つの出会いに注意を払わなければ。
最後に
この本を読んだ後、色んな想いが私の頭の中を駆け巡っています。
今回で3度目ですが、驚くほど夢中になります。
そして、自分の身の回りの人間関係を一から見直したくなると思います。
週末、じっくり時間がとれるときに是非、読んで頂きたい。
本日はこの辺で。
ありがとうございました。
れんげ