仕事をもっとしたい。
私は女の前に小説家だ。
19歳で小説家デビューし周囲から当然のように女性作家として扱われることに戸惑いを隠せない主人公、雪村。
性別なんて関係なく、作家として生きたい――。
担当編集者の紺野や大学の友人の時田との出会いを経て、自分がどうありたいのか、何になりたいかを不器用ながらも模索していった先に彼女が手に入れたもの・気づいたこととは。
性別に対する違和感、悩みながら生きてきた主人公・雪村の心の成長過程が綴られた物語。
登場人物の濃さ◉
ずばり山崎ナオコーラさんでしか描けない物語。
真っ直ぐ、正直で、心がいたい。だけど共感に包まれていきます。
中でも、登場人物の要素が大きいです。
主人公の雪村は、若くして小説家になり、担当編集者の紺野と二人三脚で頑張っている。
一冊を通して19から27歳までの様子が描かれていますが、小説家というより一人の人間としての雪村の人物像・心情描写がとても印象深いです!
雪村が自分を女の子と認識し始めるところから物語が始まります。体重が増えるごとに一喜一憂し、過食症に走ってしまう…そんな雪村。
さらにファンからは「女性作家」としてみられてしまうこと対して私はただ小説を書いていたいだけなのにと葛藤が生まれていくのです。
彼女にとって最も大きな影響を及ぼした存在というのが大学でできた友人、時田くん。彼の人間らしさに雪村同様、私もそそられました。
是非、注目してみてください。
他人に異性を求めない、究極の自己愛。
自分の性と正面からぶつかって、
苦しんで、
傷ついて、
決断して、
そして、やっと見つけた自分自身が性を気にせずに安定して生きていける場所を見つけようとする雪村が多くの読者の共感をえるんだと思います。
それでも仕事がしたい。
他人の代わりに自分の中の異性があれば生きていける。小説がかける。
どうしても女性作家というレッテルを貼られてしまい男性がいないと仕事ができないと思い込んできた彼女。
雪村という一人の人間性のインパクト大きくて、読み始めてすぐ..
私の心が一気に支配されました。
自分の好きな格好をして、好きな喋り方で、男の子との友情もそのままで…
「自分のことを頑張り屋だと思うより、頑張らない駄目人間と思う方がずっと簡単」
不器用さはそのまま包み隠さず他人にぶつかっていこうとする彼女。
正直で傷つくってわかるのにためらわない彼女の一つ一つの言動に戸惑いながら…
深く考えれば考えるほど真っ暗な穴にはまっていくのでした。
でもその過程があるからこその最終章。
多少の後悔はしても、意味がないことなんてない。
登場人物の時田くんの言葉がいちいち刺さってきます。
そう、わかってるよ!って反発したくなるようなセリフ。
でも実は図星すぎて隠れて傷ついているセリフ。
————「人は自信をつけるために他人と付き合う」と思ってるの?
そうやって、正しい?人との付き合い方..他人との関わり合い方を学んでいく主人公は気づいてしまう。
自分のことしか考えてなかった。
自己愛の延長なんだ。と。
はっとさせられることばかりで、自分が恥ずかしくて…
でも雪村みたいに、これからちょっとずつ自分が見ていくベクトルを変えていければいいなと思った。
仕事をしているひと、性別について悩んだことのあるひとにぜひ読んでほしい作品です。
最後までありがとうございました。
れんげ
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