彼氏がいるのに、別の人に突然キスをされた汐梨。
完璧な姉が大嫌いな双子の妹。
バイトを次々と変え、好きな女の子のことばかり考える翔多。
好きな人の好みに合わせて自分を器用に変えていく椿。
自分が今何を描きたいのか、向き合いたいものがはっきり分からない新。
才能という壁に押し潰されそうな遥…
20歳、
将来なりたいもの、
大学生活…
それぞれの焦りや不安を胸に二十歳を迎える若者たち
彼らだけが感じ取れるもの、考えていることをありのままに描いた青春小説。
れんげ
今回読んだのは、朝井リョウさんの『もういちど生まれる』
・学生時代の懐かしい気持ちに浸りたい。
・自分がやりたいことがはっきりしなくて焦りや不安がある
登場人物たちの魅力
ひとつひとつが絶妙に繋がっていて、最後にはいつのまにか登場人物たちをより身近に感じるようになっている不思議な作品。
20歳という人生の大きな節目の間にいる彼、彼女たちの声が風にのって聞こえてくるような、ほろ苦くて切ない青春小説。
登場人物全員のストーリーが読みたくなってしまうくらい気になるキャラがでてきます。
個人的には風人くんと楓の心の内を綴った物語が読みたいなと思った。
好きになってはいけないひとを好きになってしまった苦しさ。
好きな人の好きな髪型に次々と自分を変えていく楓。
大学に通う人、専門学校に通う人、現実をどう真剣に捉えているのかとか、
同じ20歳でも考え方が違ってくる。そこも本作の見どころではないのでしょうか。
若者としての生きづらさ
大学生になる前、私は大学生活に何を望んでいたんだろう。何が見えていたんだろう。
進路を決める時、
大学に入ってから、
選択授業を決める時、
自分と真剣に向き合ったことがあっただろうか。答えが出たことがあっただろうか。
自分が何を学びたいのか、どんな道に進みたいかなんてちっとも分からなかった。
やりたいこともたいしてなかった。
楽しい、こんな私にもできる才能あるかもしれないと思ったことを流されるようにやってきた。
誰かにつまらない人間だと思われたくない。
個性が欲しくて、特技が欲しくて、村人Aになりたくなくて、
私という存在意義を証明したくて必死だった。
なんであんな、取り憑かれたように人と比較をしていたのか、
少しでも人と違ったものを見つけるのに一生懸命だったのか。今考えると…それはあの頃のあの瞬間にしか理解できなかった感情だなと思う。
才能、比較、個性、将来、
若者たちがそれぞれ直面し始める悩みを丁寧に汲み取って描写された本作。
あの頃を懐かしく思うのか、自分とは違うなと共感できないまま読み終える読者さんも様々かなと思う。
たとえ、共感できなくても
ああ、こんな人いたな、
仲が良かった〇〇さんのことかっこいいと思ってたけど、実は不安だったのかなとか
自分のあの時のこの感情はこういうことだったのかも..とか、
そして、この先そういう人にどう声をかけてあげればいいのか、
背中を押してあげたいと思った人にどう接すればいいのか、
じっくり考える機会を与えてくれるこの作品を読んで良かったと思える。
大人になるということ
「誰の目にも見える努力で、欲しいものを勝ち取る。」
私は、逆に見えない努力をして勝ち取った勝利の方がかっこいいと思ってたから…
わざとそんなにやってないって嘘ついたりしてきた。
「才能があるんだよ」
「別格だよ」
「勝てないよ、ずるいよ」って言われたほうが気持ちがいい
でもそれは自分の逃げ道をつくっておくためのものだったのかもしれないよね。
もし、満足のいく結果が得られなかった時、言い訳という強力な盾ができる。
虚勢をはっても、でもきっと誰よりも臆病で、泣き虫。
プライドも高くて人に甘えられない私。知ってる。
ここでもやっぱり人と比べていた私。他人の目を気にしている自分にヘドが出そうになる。
それでもなりたい、やりたいこと。
「その瞬間があるかないか」って人が努力しようとする最大の原動力になる。
共感できて共感できない部分。
これから彼女たちはどういう人生を歩んでいくんだろう。
がむしゃらに、険しい道を辿ろうとする者と、時間や労力よりも効率の良さを優先していち早くゴールに辿り着こうとする者。
じりじりと差が生まれてくる。
ああ、これまでやってきた努力はなんだったんだ。意味がなかったのか。
って生きる気力さえ失ってしまうこともあると思う。
若者に限らず、大人になってもおんなじ悩みで苦しんだり戸惑いを感じている人がたくさんいるんじゃないかな。
私だって、まだ当時と同じ悩みや弱点に悩まされることがたくさんある。
人はそう簡単に変わらないから、その場その場をどう生きていくかで対応能力を磨いていく。
しょうがないな、もっとラクしていこう。
っていう余裕という盾を身につけていけたらいいなって思った。
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