本日は、宮下奈都さんの「太陽のパスタ、豆のスープ」という小説をご紹介いたします。どうぞお付き合いください。
この本もやはり題名と表紙の絵にそそられてしまいました。パスタと豆のスープはどのように物語に出てくるのだろう、とワクワクしながら読み進めたのを覚えています。
私は、小さい頃から人が殺されるドラマや映画、アニメも好きではありません。
もちろん、小説に関しても推理物や事件物などは進んで手に取りません。単純に、いい気持ちにはならないからだと思います。
読んでもいないのに好き嫌いとか決めつけるのは良くないと思いますが。
どちらかというと、平和的で豊かな気持ちになる本を好みます。
この本は、その象徴とも言えるでしょうね。また読みたいと思える素敵な本でした。
ストーリー
やりたいことや、楽しいこと、ほしいもの、全部書き出してごらん。
結婚間際に破断を強いられ途方にくれていた明日羽に叔母のロッカさんに提案される、明日へのリスト。通称ドリフターズ・リスト。
相手の意見に流され自分のやりたいことを見失っていた明日羽が周りの人物との関わりで、一歩一歩ゆっくりと本当の自分を見つめ直していく。ちょっとコミカルで心温まるハートフルストーリー。
こんな方におススメ!
- 自分がほしいもの、やりたいことが分からない
- 気持ちが落ち込んでいる
- 今の生活・働き方を変えたい
- 自分に自信が持てるようになりたい
読みやすさ
厚さも薄くて、内容的にも非常に理解しやすいです。
通勤途中やカフェで一息などにサラッと読めてしまいます。
小説を読み慣れてない方にとてもオススメ!ストーリー的にはあまり、強弱がなく淡々と日常が過ぎていきますが明日羽の心情をとても鮮明に語っており読み応えはあります。
キャラクターごとの喋り方や態度などはっきりしていてイメージしやすく、会話のキャッチボールが見えるようで読んでいて楽しいです。
見どころ
私が特に注目してほしいのが、明日羽を取り囲む登場人物たち。
とても個性があり魅力的でこの本を楽しむ大きな要素だと思います。
ただ、それぞれの人物にそこまで深入りはしていないのでもうちょっと知りたいなと残念に思いました。まあ、私風に想像すればいい話なのですが汗
彼らのセリフはどれも私に響く物ばかりで印象的です。
感想 -お気に入りの言葉と共に
ここからは、私自身が考えたことを残していきたいと思います。お気に入りの文章を抜き出して思いのまま書いていますので幼稚な文章で申し訳ないのですがお付き合いください。苦笑
ネタバレが含まれていますので、まだ完読していない方はここまでにしてそちらを優先してください。また戻って来て頂けると嬉しいです。
第三章 鍋を買う
そのうち頭がゆるんで体も心もゆるんでくるよ。それまでは、ひとつずつゆっくり作業するといいね。慌てることないよ、あすわはあすわだから。
友達の京と鍋を買いに出掛けた時、鍋の色で迷っていた明日羽にかける言葉である。この何気ない一言が私にとても響いた。
さっきは、黄色に決められたじゃない!焦らずゆっくりでいいんだよ。
何かに焦っているのか自分でも分からないときがあり、そんな自分が嫌になっていきイライラすることがある。今の世の中には、たくさんの選択肢があり私は常にプレッシャーや焦りに囚われていた気がする。
自分の人生はこれでいいのか。
ここで間違ってしまったら取り返しがつかないかもしれない。
人と違う生き方はリスクが高いから用心しないといけない。など心配事は尽きない。
勝手に他人と比べている自分が窮屈で苦しくて。
明日羽が私自身であり、自分を見ているように思えた。
そんな型にハマらなくていいんだよ。あなたはあなただから…
自分に見えてないものが、相手に見透かされていることがある。
このセリフを読むと、フッと得体の知れない肩の荷が降りたような軽い気持ちにさせてくれるみたいだ。
第六章 ホットケーキにビール
あすわ、毎日のごはんがあなたを助ける。それは、間違いのないことよ。
明日羽が久しぶりに実家に戻り兄とホットケーキを食べている時、ふと、お母さんに言われる。
仕事辞めちゃおうかな、どうせ私の代わりはいくらでもいるし職場の居心地悪いし。どうすればいいのか分からない、お金も仕事も何もかも。と明日羽は言う。
あ、これ今の私かもしれない。
きっと同じ状況におかれないと、他人には理解し難いことなのだろう。でもさ、冷静に考えてみたときにこの状況に自分を追いやったのは自分なわけで
他の人はきっとこの道を選んでいなかったかもしれない。明日羽のお兄さんのようにやりたいこと一直線とか、明日羽の仲良しの同僚のように豆で人に幸せを届けたいと思っている人にこの感情が生まれる隙間はないのかな。
そんなときのこのお母さんの言葉、毎日のごはんがあなたを助ける。これはどういう意味なんだろう?
物語の中で明日羽がごはんを作ることで暮らしがまわっていくと解釈していたが、さすがお母さんの台詞だなと思った。毎日朝から家族のためにごはんの支度をして、1日が進んでいく。ごはんの準備をすることで自分の気を引き締めるということなのかな。楽しみでもあり、けじめでもあり、達成感でもあり、嬉しさだったりいろんな感情が生まれてくるごはんは偉大だ。
第九章 不可能リスト
お金の使い方ってつまりはその人を表すことになるみたいだ。何にどれだけおかねを使うかにその人の人生が現れるような気がしたのだ。
明日羽のドリフターズリストの項目が消されたり書き足されていったりと変貌を遂げていき、ある日”経済の勉強をする”と加えているシーンである。
まず、第三章の京に「頭がカチカチだよ」と言われていた明日羽の変わりように驚いた。
ほんとだ、頭は時間をかけて心身ともに柔らかくなっていくと自然に新しいものに興味を持つようになるんだ!私たちは、そのようにして知識を得て賢くなっていくのかなあなんて思った。
そしてこの言葉。まさにその通りだと思う。うまく文章で表せないのだがとても納得。お金の使い方に正しいも誤りもない。その人自身を映し出している鏡というものだろうか。
人に合わせたり真似をする必要なんてないんだ。わたしはわたしらしく。
最後に
この本の終わり方は、希望に満ち溢れていてとても気持ちがいいです。悲しい要素は全く無いです。さて、私は何をしようっとついやる気がでてきます。その勢いのまま誰かにその気持ちを伝えることも大切かなと思います。あなたのお気に入りの台詞はありましたか?是非、共有して頂きたいです。^^
私は何かにつまづいて凹んだ時にまた読むんだろうな、そう思っています。
ありがとうございました。